第7回トレイルブレイザーズ・テンピース・ブラス Trailblazers 10 Piece Brass The 7th !

東京文化会館(小)で10人の金管奏者と2人のパーカッションによるブラスアンサンブル「トレイルブレイザーズ・テンピース・ブラス」の演奏会を聴いてきました。
音が聴ける環境の方は、以下から公式サイトをどうぞ(クリックすると新しいウインドウで演奏が自動的に始まります)。


やっぱり、ここの演奏はスゴく元気になります。エネルギッシュさと美しさを併せ持ってて。端的に言って、ブラスアンサンブルって、きれいなコラールもパワフルなファンファーレも両方アリですからね。なまじ、自分が演奏できるだけになおさらスゴさが良く分かりますし。「トレイルブレイズ」=(時代を)切り拓く、という意味があるらしいですが、このテンピースの編成はイギリスのブリティッシュスタイルのブラスバンド*1が発祥だそうで、まだまだ日本では少ないスタイルだそうです。吹奏楽の最先端、といっても良いでしょう!
金管アンサンブルという演奏形態の面白さって色々あるんですが、まず見た目も大事で。金管ってエレガントな華とカッコ良さが元々あると思うんですよね。それから音の出る原理がかなり分かりやすいかと。唇をブーって震わせているのに金属製のメガホンを当てているような物なので。
そういうシンプルな楽器なんですが、やれるヒト達がやると賛美歌から宇宙戦艦ヤマト(笑)までやれちゃうっていう……無限の可能性? みたいな面白さがあると思います。同じ原理の楽器ばかりでやっているから、和音がきれいでサウンドに統一感があるのも長所です。それに、パワーがあって体感しやすいのに、耳には優しいという特性もあり、聴いていて気持ちのよいものです。もっと一般に面白さが伝わって、オーケストラみたいな人気が出ると良いんですが。
ちなみに、今日のコンサートは初めての方がかなり(半分以上?)いらっしゃって、やはりそれは東京文化会館というホールの良さもあったんでしょうね。また年齢層も金管関係の演奏会だと吹奏楽部の中高生が多いんですが(今回も多かったんですが)どちらかというと中高年の方も多くて。いつのまにやらクラシックファンに知られたのかなあと、ファンとしてはうれしいところでした。


今回、CDの配布(シングルカットのような形で非売品)があったり、聴覚障害者向けにサウンド体感システムやMCの手話通訳を提供していたり、終了後にロビーで演奏者とお話できたり、いろいろとサービスがありました。
こういったことも、音楽ファンを増やす方法として非常に良いと思います。全国各地でオーケストラをはじめとする演奏団体の資金繰りが悪化していたりしていますが、本来音楽は色々な人が様々な想いを胸に普通に聴きに来て当たり前なのです。それはクラシックに限らず。音楽が普通の人の手の届かないところに行かないようにするために、やれることはきっとまだまだ沢山あるのでしょう。


ちなみに、CD配布に至った経緯についてはこちらから。フィリップ・スパークや吹奏楽のファンだけでなく、普通に聴いていても気持ちの良い曲なので、今回だけの限定プレスって何だかもったいない気がしますが。特に2楽章は賛美歌みたいにきれいなんですよ……。


さて、演奏ですが。第1部の曲は世界初演が沢山ありました。「ファンシー・フライト」はなんとも締まりの良い曲で、これはアンサンブルコンテストの曲にしても面白いんじゃないかなあとか思いつつ(規定で12名もOKだったか分かりませんが)。「英国の賛美歌による変奏曲」は黒沢ひろみさんの美しいソロに「やっぱユーフォニアムっていいよなあ……」とトロンボーンと音域が同じ楽器のよしみで浮気者したりして(笑)。配布されたCDに入っている「三つのロンドンの情景」は特に第2楽章の美しさが非常に良かったです。心が洗われるというのか。最近、ちょっと私生活の方で自分的に嫌なことがあったりしてて元気が無かったので、何か救われたような気がしました。


第2部は衣装も変わり、MCが入ってより面白くなりました。「シティ・クルーザー」「スペシャル・プレイス」はなんとなく……これを聴きながらお酒を呑んだら、それぞれにおいしそうな気がしたんですけど、そんなことを思ったのは私だけですかね? 「ウルトラマンメドレー」と「宇宙戦艦ヤマト」は残念ながら私は世代からはずれているのでCMで聴いたくらいなモノですが、きっとこれをリアルタイムで見ていた世代の人はドキドキできたんだろうなあ。ちょっとうらやましかったです。そういう体験に乏しい世代なので……。
第3部となるのが通例のアンコール。すっかりこのバンドの定番になった「トレイルブレイズ」は、ますますピリッとした音になっていっているのがやはりプロというか。これくらい吹いていると疲労もくるはずなんですが。ダンスバンドの良き時代を思わせるプレスリーに続き、トリは作曲者の東海林修先生も会場にいらっしゃっていた「ディスコ・キッド」! 全日本吹奏楽コンクール・1977年度課題曲から30年間も全国の吹奏楽団で愛され続けている曲で、自由演奏会の定番でもありますから、私は頭の中で楽譜を広げながら見て聴いていました。トロンボーンパート、かなり難しいんですけど……。*2目の前で演奏ができている「お手本」が居ると、自信が湧いてきました。もう少し粘ってみれば、できるかも? それに、思っていたよりもテンポは遅めで、かっちりとタイトに幅広い音でやっても大丈夫だと分かったので、もっとおおらかな気持ちで練習したいと思います。


ともあれ、東京文化会館デビューおめでとうございます! これからのご活躍をお祈りします!

プログラム

  • 第1部
    • ファンシー・フライト/後藤 洋 作曲(委嘱新作・世界初演
    • 英国の賛美歌による変奏曲/フィリップ・スパーク 作曲(テンピース版世界初演) Euphonium solo:黒沢ひろみ
    • 三つのロンドンの情景/フィリップ・スパーク 作曲
  • 第2部
  • アンコール(第3部?)
    • トレイルブレイズ/ゴフ・リチャーズ 作曲
    • プレスリーのメドレー(正式な名称は聞き落としました)
    • ディスコ・キッド/東海林 修 作曲

*1:27名程度の金管合奏団で、映画「ブラス!」で有名になったスタイル。ブラスバンドと言っても、木管を含める意味での吹奏楽ではなく、文字通り金管ばかりの編成。今日のMCでおっしゃっていましたが、テンピースブラスはブリティッシュブラスバンドから首席奏者を中心に集めた編成だそうです。つまり、プリンシパルばかりの贅沢なバンド!

*2:個人的には同じくコンクール課題曲では「コーラル・ブルー」や「饗応夫人」より難解だと思っていますが。