=新時代の識字率格差問題?

私が年上の方にパソコンサポートをして差し上げるとき、「わたしはこういうのが苦手でねえ……(うなだれる)」的な反応をよく示されてしまって、『ちょっとまったコール』をしたくなることがある。
昨日も書いたけれど、それは、あなたが完全に悪いんじゃない。
導入で、いいマニュアルとか、いい講座、取り組み方、目標の立て方、作業ジャンル……に、何がしかのゆがみがあっただけじゃないかと思う。


パソコンは「入門」するものでもない。
「初心者」なんて幻想は要らないと思っている。
単なる道具でしかないのだ。


料理が下手でも、がんばって主婦をしている人はたくさんいるし、やっている間にそれなりの包丁さばきや味付けを身につけられる。得意なことだってできてくるだろう。私は何度やってもリンゴの皮も剥けないくらい不器用だけれど、ホイル焼きはちょっとしたものだ。


人付き合いが苦手でも、それなりにがんばっている外勤の営業マンさんだって、たくさんいるに違いない。長い年月をやっていれば、なんとかなるようになって行くだろう。


なぜ、パソコンにはそういうのがあんまりはないのか?


一つの原因としては、マイクロソフト社の動きが、一般庶民には早すぎるからだ。
Windows Vistaのリリース(発売)はユーザ(パソコンを買う人、使う人)に混乱をきたすだけじゃないかと思っていたけれど、案の定である。


Windows XPは、発売されてから7年しか経過していない。
7年も経過した、とする論調がPCの論評では多数派だけれど、庶民感覚で言えばそんなものである。


2001年、奇しくもこの頃に日本語ワープロ専用機は販売終了したが、ワープロの入れ替わりマシンがWindows XP搭載PCだった人がかなり居るのではないだろうか。ワープロが2004年くらいに壊れたとする。3年くらいすれば壊れることだってあるだろう。だとすると、4年しか経っていない。それに、まだまだパソコンを触っていない人もそれなりに多い。


そうなると、みんな使えてるらしい……という幻想だけが横行することになり、できない人はますます肩身が狭くなってしまう。モチベーションは下がる一方だ。


ほんとうに、それで、みんなで幸せに生き延びられるのだろうか?*1


大人が付いて行けてない道具が作り出す世界の中で、様々なトラブルや発明が行われている。
そして、それは、頭の回転が速い若手や子どもだけが使っていたりする。
もの凄く違和感があることだ。ものすごくおかしなことだ。
分からないから、そんな怖い物は子どもに使わせないとかいう極論になってしまう。
そうではなく、大人ももっと良く知り、コントロールする側に参加すればいいのだ。
そのいい導入ができる人間が、まだまだ多くはないということなのかもしれない……。学校裏サイト問題、ケータイサイトフィルタリング問題などに、そういったことが見え隠れしている気がしてならない。


ともかく、このようなデバイド(格差)は、下手すると、人類にとっての識字率格差問題なみに、大きなテーマを含んでいる可能性さえある。
言語を作り出すのは、アップル、マイクロソフト、アドビなどの各社……世界的人口で見れば、一部の民間企業でしかない……と、Webアプリケーションベンダーなどだ。あとはW3Cなどのこういう世界の規格を作る国際機構のようなものだろうか。
いずれにせよ、一部の人が作った物をうまく使いこなせるかどうかで、貧富の差や学習能力の差を決めつけられてしまう。


非常に怖い時代だと思っている。


自分には何が出来るのか、よく考えておきたい。時間を大事にして。

*1:(C)赤石路代、『AMAKUSA 1637』、小学館