「なんて素敵にジャパネスク」「銀の海 金の大地」の氷室冴子先生がご逝去

はてなブックマーク経由で知りました。肺ガンで亡くなられたそうです。まだ51歳……。早すぎます。
日本の平安時代は美しく、そして面白いと教えてくださった作家さんでした。
実は昨日、地元の書店で「なんて素敵にジャパネスク(人妻編)」の最新6巻が今月発売予定だって知ったばかりで……。漫画を通じても改めて面白い作品だなあって思って、ひそかに応援していたんですが。

氷室先生の作品群がなければ、今の自分は無かっただろうと思います。
一見難しいイメージがあった平安時代。そこでその時代らしくなく(?)大活躍する姫君。彼女の活躍を追いかけているうちに、いつの間にか平安時代について日本の文化について親しんでいるという……。一般に難しそうだと思われているもの→でも実際に知ったら面白い。子供の頃、この経験は本当に貴重でした。先生の作品とは直接つながってはいないにしても、難しいことを人に分かりやすく解説するのをライフワークとしよう、という動機のひとつになっていると改めて、今、気が付きました。

日本の平安時代と並んで、私を日本古代史にも親しませてくださった名著が「銀の海 金の大地」です。現在絶版なので「復刊ドットコム」のURLを挙げておきます。よろしければ1票を!
『銀の海金の大地』(氷室冴子・著)復刊リクエスト投票
個人的にはジャパネスクよりもこちらの方が好きでした。よりファンタジー色が強く、よりドラマチックに……。「闘う」「護る」「愛する」「嘆く」……感情の色合いは非常に濃く、本当にどきどきした作品です。作風は「ジャパネスク」とはまったく違うといえるでしょう。飯田晴子先生の秘密めいたイラストとあいまって*1、連載が楽しみでした。私にとっては、「ジャパネスク」は古典、「銀の海金の大地」は現在進行中の連載だったので……。
10年以上過ぎた今でも、「わたしという名の王国」「心に金の砂を持つ」という名フレーズは心に刻まれています。


連載終了のころの事情について「復刊ドットコム」のコメントにも書きましたが、以下を引用します。

(--前略--)予定されている『佐保彦の章』へと……続いて行く、はず、でしたが。当時の記憶では新章突入のために雑誌「Cobalt」の表紙を佐保彦のイラストが飾ったのですが、(--中略--)結局雑誌掲載はなく、そのまま10年が過ぎてしまいました。(11巻は1996年1月10日初版です)
11巻のあとがきで、
「『銀の海 金の大地』の序章ともいえる[真秀の章]を経て、物語はいよいよドトウの本編に突入です。文庫本11冊分つかって序章だ、すごいぞ。(中略)佐保一族や大和そのものの運命を、いざ書き出したときはノンストップで駆け抜けます。ご期待下さい。」
とあります。(--後略--)

序章である『真秀の章』は、色々な戦いの末、主人公たちが亡くなり転生していくその直前後くらいで終わっています。サブタイトルが「古代転生ファンタジー」で、いよいよ生まれ変わった彼女たちがどう生きて(死んで)いくのか、本編に入る……ところでした。時代的には大和朝廷の成立期になるのでしょうか。
このときは先生の何かのご病気*2で、キャラクター(佐保彦)が小説誌「Cobalt」表紙イラストにもなったにもかかわらず未掲載。ご病気ならば仕方が無いし、読者としてはご快復をお祈りし、早く続きを読みたいなあ……と思っておりました。その気持ちは何年たっても変わらなかったのですが……*3。「ジャパネスク」本編が新しいイラストを付けた上で再刊されたり、漫画版が再開したこともあり、ともかく待っていればいつか、と思っておりましたが……。
でもたぶん、もっとも無念なのは先生ご自身だと思います。
心からお悔やみを申し上げます。そしてご冥福をお祈りいたします。
多感な頃に楽しい時間をありがとうございました。

*1:そもそも、飯田先生を発掘しなければこの作品の連載はありえなかったようなことも当時読んだ気がする

*2:このときはガンということは無く、別の病気だと発表されていた覚えがあります。

*3:10年ぶりに続刊、なんて、漫画でも小説でもたまにある話ですし。