H1N1新型インフルエンザと日本のインフルエンザ治療文化について

引き続き、現実のインフルエンザについて。
この事態、大変ではあります。でも、わけの分からないミクロ生命体に振り回されているわけではなく、あくまでインフルエンザウイルスはインフルエンザウイルス。宿主生命体の体内でも進化している可能性とか、特定できない発生源とか、いろいろ言われているけれど、インフルエンザウイルスであることにはかわりはないんです。


日本ではインフルエンザ対策はかなり市民生活に定着しています。というか、春先は花粉症・秋からはインフルエンザや風邪といったことで、日本ではそういった季節にはマスクを着用し、手洗い・うがいをする習慣があります。もちろん国民全員がしているわけではありませんが、マスクが医療文化的に根付いていることのアドバンテージはかなり大きいものがあります。衛生習慣が身についていることや衛生用品が手に入りやすいこと、内科・耳鼻咽喉科に比較的気軽にかかりやすい健康保険があること。
そういう意味で、もともとの対策が進んでいるなあと。


それを特に実感したのが、以下の報道写真でした。

ロンドンの空港でマスクをしている親子ですが、お母さんの方のマスクが鼻からはずれています。これではマスクの用をなさないのですが……サイズが合わなかったのかもしれません。日本なら男性用・女性用・子供用なども100円ショップにすら揃っていたりします。この写真に違和感を感じたのは、マスクの正しい身に着け方を知っている日本人ならではなのかもしれません。


それから、そもそもメキシコではどのようなマスクが配布されたのか、というのが次の写真です。

ある日本人貿易商の方がメキシコでマスクを受注して日本に帰ってきたようですね。この方はNHKのニュースでも昨日出ていたと思います。私はそのときにメキシコで配布されたマスクのあまりの薄さ、紐の細さに注目してテレビを見ていました。実際、この写真のマスクは、よく見ていると向こう側が透けて見えませんか? これで効果があるのかどうか……。


あともうひとつ。

にありましたが。まとめると、メキシコの医療制度は保険診療自由診療の2本立てだそうです。公立病院の医療費は無料(医療事故も多くレベルは低い)。自由診療では私立病院を患者が自由に選択して診療してもらえ、アメリカから技術導入しているので結構レベルが高いのですが、医療費は国が関与せずに医師が決めてOKだそうです。医薬分業で医師は処方箋を書くだけ、薬局は病院と無関係で処方箋にしたがって薬を出す(なので高価になりがち)……とのこと。「例えば,上気道炎で受診し,3日間抗生物質と若干の薬剤を処方された場合,薬剤だけでほぼ1万円ほどになる。」との記述には非常に驚かされました。日本ではたぶん、初診料+診察料+処方箋発行+調剤料+薬価……を合わせても、1万円で十分におつりがくるのでは? もちろん症状によりますが。


2時間待ちの3分診療とか言われていても、それでも、受けられるし治せる。


そもそも、予防策を個人レベルで実行できる。知識もあるし。


日本のインフルエンザ治療にはいろいろ問題もあるのだと思いますが*1、でも、できていることはそれなりにしっかりしているんじゃないかなあ、とも思っています。


ゴールデンウィークで海外に出かけるヒトが多い日本では、当然、このインフルエンザを持って帰ってきてしまうヒトがそれなりの数いると思います。でも、「5月に2月が来たんだ」と思えば、対策は立てられます。12月から2月のインフルエンザシーズンにやっている対策を、ちょっと暑いけど5月にマスクをするとか、帰宅したら石鹸付けて20秒手を洗うとか、石鹸で洗顔もする*2とか、いつもの2月のように実行すればいいわけです。


冷静にニュースを受け止め、日本に生きる日本人としてできることをきちんとしよう、と、改めて思ったのでした。楽観も悲観もしないで。あわてたりもあせったりもしないで。

*1:タミフル飛び降り問題とか、検査とか、いろいろ……。

*2:ウイルスが顔にも付着しているかもしれないため。外出先では顔を極力触らないようにする。