「自国からトップの選手が出れば……」

男子サッカーワールドカップ2022。
本田圭佑さんのAbema中継での解説が親しみやすくて面白いと評判ですが。

ってな感じで「ワールドカップ盛り上がるよ」とのこと。
これ、よく考えてみたら本当に深いなぁと。
今大会の始まる前の空気感を思い出すと。
グループリーグでドイツ、スペインとぶつかることとか。
日本代表はもうひとつ調子が上がらないというか。代表選手選考でも(これは毎度ではありますが)どうして○○選手は入れないんだ! みたいなブーイングがあったり。
海外でも、カタールの会場整備でさまざまな問題が起きていたこと。人権や生存権に関わるような。……あまり明るい感じがなかったんですよね。
それが、結果を出せばこの空気。この盛り上がり。
個人的に驚いたのが。
地元のローカル駅で通勤電車に乗ろうとしたら、仲の良さそうなサラリーマン風のおじさま2人とすれ違い、サッカーの話をしていたことです。
昔読んだ漫画(たしか「エースをねらえ!」だったかな)で。主人公が「見上げるような大きな山になりなさい」と激励されるシーンがあったのを思い出しました。後に国際大会で大きな結果を残して日本へ凱旋した時の歓迎ぶりで「自国からトップの選手が出れば、こんなにも違う。このことをおっしゃっていたんだ」と実感した、という(うろ覚えですが)。多分、読んだことがある人ならわかるかも。
見上げるような、次の世代からの大きな目標になるような、そして、一般の方々が応援したくなるような、大きくて高くて尊い山のようなチームが現れれば。
これだけ空気が変わるのだなと。
試合の映像を見てみると、今までの日本代表なら、ここにフィニッシュの選手がいない…! とか。このクロスが通らない…! とか。そうなっていたようなシーンで、ラストパスを受けてくれる人がいる。あるいは、外れたボールをフォローしてセカンドチャンスを作ってくれる人がいる。
二の矢、三の矢になれる選手が本当に沢山いる。そんなことが増えました。つまり、ボールを持っていない時に次の瞬間をどう予知して動くか。非常に高度なサッカーです。
あとは運もあります。
スペイン戦の決勝点のクロスは、ゴール脇のライン上から蹴り返したものでした。本当にギリギリでした。ボールが数ミリほど空中で線上に球体の端を残していたからオンラインを認められた。
あと0.001秒でも脚のヒットが遅かったら、ボールはラインを割っていたはず。VARが整備されていなかったら、アウトボールと判定されていたかもしれない。
陸上の短距離走で、写真判定での明暗が分かれることがありますが、サッカーでそのレベルの判定が必要になることがあるんですね。
そんな騒ぎになったのも、すべては結果を出してきたから。
あそこはオレのコースだから絶対に決めてやる!
堂安選手から、そんな強い言葉が出て、それが前向きに報道されるくらい。
そういう人が出てきた。
ゴール前で惜しくも決められない日本代表の姿はもうないのですね。
ドイツ代表には3割、スペイン代表には2割しか日本のボールポゼッションがありませんでした。つまり、カウンターでの勝利。しかも両方とも逆転勝ち。
今までみたいにゴール前で外していたら、もうチャンスはありませんからねぇ。
逆に。相手にとってはやりづらいかも。こんなに、試合時間の7割も8割もボールを持っているのにゴールが遠い。それはがっちり護っているからです。もう嫌になるくらいに。スペイン戦の後半の後半はそういう場面が本当に多かった。
少なくとも、日本の守備は間違いなく世界トップレベルであることは十二分に証明できたでしょう。誰にも文句は言わせません。
さて、さて、さて。
このがっちり守備、素早いカウンター、二の矢、三の矢ある攻撃。
どこまで行けるか……。
てっぺんまで届きうる気もします。
仮にブラジルとやったとしても、そう簡単には今回の日本代表の守備は崩されないかもしれません。ゴールは運もあるのでわかりませんが、守備は相手をきちんと読めばかなりの部分がなんとかなりそうです。
さて、この数週間で築いた大きな山。さらに高くして、日本にサッカーワールドを広げることはできるでしょうか。
そして、世界に。日本のスタイルのサッカー、みんなでがっちり護りつつ、連動カウンターと強い心のフォワードで最後の1ミリまで諦めない攻撃をする、組織力の強い全員サッカーを、世界的に好きになってもらうことはできるでしょうか。ブラジルのサッカーのファンが世界的に多いように。日本代表のスタイルはどうでしょうか。
ともあれ、どこまで行けるか楽しみです。