「復刊ドットコム」−−Webが生んだ古典産出システム

不意に昔の漫画が読みたくなることが、たまにある。
しかし、昔の名作が今は手に入らずに読めない、というのは悲しい。絶版の恐怖である。
絶版出版物の救世主、といえば……。「復刊ドットコム」である。早速、以下のリクエストを出してみた。

私自身は『夢幻伝説タカマガハラ』は連載時には読んだことが無かったが、以前、ネットで評判を聞いて古本で購入した。実は今も、絶対に処分したくない作品として持っているが、何気なく調べてみて絶版ということを初めて知った次第である。
環境問題を子どもに分かりやすく説いた漫画は結構あるけれど、面白い冒険ファンタジーものとして、かつ寓話として『環境保護の心』を優しく教えてくれる漫画は、他にあまり思い当たらない。この作品は、当時大ヒットをしたわけではないが、環境問題が当時よりも深刻化した今だからこそ、子どもたちに本当にお勧めしたい作品である。


ところで、「復刊ドットコム」に上がってくる作品は全て絶版出版物。いわば一度「読み捨てられた」ものばかりだ。しかし熱心なファンがいる、次世代に伝える価値がある、今だからこそ価値を見直したい書籍である、といった一定の評価(リクエスト者100名)が得られれば、版権者と交渉し、問題が無ければ今の技術*1で復刊してもらえるサービスである。
言葉は悪いが「敗者復活戦」といえなくもない。しかし、復活した書籍のもつ力というのは、負けたことが無い新刊書籍に比べたら上を行き得るのではないか、という風にも思える。市場規模は新刊書籍に比べたらまだまだ小さいだろうが、時代を超えた支持がある、という意味では復刊書籍は無視できない存在だ。


復刊ドットコムは21世紀の古典産出システムなのかもしれない。世界で最も読み継がれている出版物はいうまでもなく聖書であるが、2000年前の書籍が世界中で読めるというこの驚くべきシチュエーションを作ったのは、やはり一種の復刊によるものだ。また、源氏物語が今でも読める、というのも、やはり復刊・復刊の連なりである。復刊ドットコムがしようとしていることもまた、古典作りなのかもしれない。現代ゆえに著作権等の問題は常につきまとうが、一時は権利上不可能といわれた出版物がどうにか復刊できた例もある。*2復刊リクエスト者が多い書籍は、次世代の古典候補出版物と言って良いのであろう。


絶版という形で一度死んでしまった出版物を再生させ、古典作品になることへの道を切り開く復刊ドットコムの活動は、読者のための出版の新しい形である。このサイトが多くの人に知られ、良い書籍が生まれ変わり続けて欲しい物だ。

*1:シンプルに重版、少部数作成するオンデマンド印刷の他、電子出版なども出版方法の対象となる。

*2:例えば、名作少女漫画「キャンディ・キャンディ」の小説版復刊などは典型的な事例。