千里眼でも見えないもの。

千里眼クラシックシリーズがまたまた出版されました。今回の2冊(あとクラシックシリーズ6 千里眼 マジシャンの少女 完全版 (角川文庫))はとっても長い(分厚い)のが特徴。じっくり楽しむことが出来ますよね。
さて、今回の「瞳」北朝鮮から来たと目されるある人物と岬さんの物語。かたや元航空自衛官にして現在は臨床心理士。こなた北朝鮮の心理学を利用する重要機関職員。お互いに理解出来そうにない境遇のはずなのですが……強い反発とぶつかり合い、そしてお酒(笑)の末に、理解に至る感動の一作です。
それにしても、北朝鮮=悪い、と決め付けすぎると、一人ひとりは人間なんだという大事なことを見落としてしまうのかもしれないですね。たしかにかの国は難しいことが多いし、やってはいけないことをやってはいると思いますが。かといって『「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ってのは袈裟にしてみりゃ迷惑な話だ。憎むなら坊主だけにしとけって』(本文にこんなセリフがあったような……)ということでもある。
最初のうちは千里眼たる岬さんでも見えなかったものがあって、それはぶつかり合いと自己の見直しの末に見えるようになりました。
ともかく、悪いことは悪いし、いい事はいい。その線引きは国際ルールなど人間が話し合ってきた蓄積による指標や、そもそも人間や国家が最初から持っているはずの権利(基本的人権その他)で決められるし、決めてなかったことはこれから決めればいい。だから、きちんとした話し合いがまず必要なのですが……。うーむ、なかなか難しいなあ。


ともかく、相互理解は、相手のありのままをまずは「見る」ことから始まるのかもしれませんね。