催眠高校

千里眼の教室 (角川文庫)

千里眼の教室 (角川文庫)

だいぶ前に出版された作品ですが、今回はお蔵入りとなっていたパラレルストーリー「催眠高校」の方について。
※「千里眼の教室」の感想はだいぶ前に書きました。

催眠II「催眠高校」入手方法

作者の松岡氏公式サイト
http://www.senrigan.net/
から左メニューの「information」→最下部へ→「サイト特典」→「千里眼の教室」→次のページで「詳細はこちら」をクリック→次の画面で最下部のバナーをクリック→角川文庫「千里眼の教室」後ろから3ページ目にある4文字のパスワードを半角英数小文字で入力→「催眠高校」を印刷可能PDFで入手できる。
(パスワードはPDFファイルにではなくサイトのほうにかかっています)。


注意書きにもあるとおり、こちらの原稿には「千里眼の教室」に収録された高校篭城事件の重要な場面、すなわち、校内生活の実態などについてはほとんどオミットされています。それから、高校篭城事件の原因なども大きく違っています。リーダビリティに富み、感動的なラストを迎えるのは、やはり出版された「千里眼の教室」の方です。


それにしても、「催眠高校」は、作者さんが言明している通り……いや、それ以上の不自然な作品でした。なんか、全体的に理屈っぽい。説明していることが多すぎて……話が流れていない感じがします。
個々のエピソードについては面白いものもあったと思うのですが、それがうまく回っていないというか。それに、キャラクターの動きが「ここではこういうことをしなくては(しゃべらなくては)いけない」というような、ストーリーの都合に合わせたものになってしまっている気がします。キャラクターと役割がしっくりいっていない。つまらないわけではないけれど、完成品から感じさせられるカタルシスが「催眠高校」にはないように思えました。読んでいてつらかったのは、やはり話のための話、セリフのためのセリフになってしまっていたからでしょうね。必然性が無い。


このレベルで「催眠高校」を書き上げてから、きちんとした完成作品として「千里眼の教室」に結実したわけですね。続けて読み比べてみたら読後感が雲泥の差でした。でも、同じテーマでも、方法論、書き尽くし方によってここまで変わるものかと愕然としました。


というわけで、「催眠高校」はいつもの「催眠」「千里眼」のような完成した面白さはありませんが、表現をすることを志すヒトにはオススメ。そこそこ出来上がった作品に対して「ブラッシュアップする」ということの意味がまざまざと伝わってくるケーススタディになりそうです。これだけの原稿を捨てなければ、「千里眼の教室」は生まれなかったんですね。小説家は大変そうです。面白さのために、原稿を捨てる判断ができる、ということが本当にプロだなあと思いました。