文化庁メディア芸術祭、Yuny賞は『Maquila Region 4』に差し上げます!(何にも出せないけど)

雪がだいぶ溶けた午後、東京都知事選挙と……『文化庁メディア芸術祭』に遊びに行ってきました。
http://j-mediaarts.jp
場所は新国立美術館乃木坂駅から直通ルートあり。


さて今回、一番印象的だった作品は『Maquila Region 4』という作品です。本作はコンセプトに基づいての活動というタイプの物なので、ちょっと説明が必要です。これ、映像による説明をじっくり見てようやく分かった感があったので。
会場には電子回路を刺繍した布が台の上に飾られています。その布にあるスイッチ部分を押すと、電子ブザーの音がする仕掛けです。
しばらく展示物付近にいましたけど、ここまでで帰ってしまうお客さんがめちゃくちゃ多くて残念。それはあくまで始まりに過ぎないっ!


問題は、この刺繍をどこの誰がやってくれたのか、ということ。刺繍って、布に糸を縫い付けて模様を作るという技法ですよね。つまり、技術が必要で、少しばかり手先が器用じゃないとできません。不器用な人は練習しなくちゃダメですよね。練習すれば出来るようになると思いますけど、ともかく、そういうのは「技術」ですよね。


で、作者のAmor MUNOZさんはメキシコの方らしいんですけど、この方は刺繍をしていません。じゃあ誰がやったのか。メキシコの郊外で、工具や材料を積み込んだリアカーを引いて、街の人にお願いしたんです。
「刺繍が出来ますか?」と。「やってもらえませんか?」と。
もちろん、無料でなんていいません。ちゃんと賃金をお支払いします。その賃金の決め方が面白い。アメリカの最低賃金=メキシコのそれの10倍以上の金額、を、支払ったんですね。このルールにより、MUNOZさんは世界的な視点での賃金格差問題を提起しているんです。


そして、MUNOZさんは刺繍をしてくれる人たちに聞くんですよ。テクノロジーについてどう思うかと。聞きながらビデオを撮らせてもらいます。テクノロジーというと、電子的な、何でも機械がやってくれちゃうようなことを思いつくけれど、今やってもらっている刺繍も技術だし、テクノロジーなんですよね、って、お話をしている間に、そしてビデオを見ている私も……みんなが気付く。
刺繍の模様は電子回路になっていて、糸は通電する糸なのだそうで、電子部品も縫い込みますから、刺繍が完成すると電子回路を組み上げることになるんです。


この布には二次元バーコードも刺繍されていました。それをスマフォで読み込むとその布を刺繍してくれた人の感想やその人の境遇が説明されたWebページに飛ぶことが出来るのだそうです。iPhoneで読み取ろうとしてみましたが、そのBiDiコードは日本のQRコードと規格が違うのか、読み込んでもらえず残念しました。ともあれ、こうして、作品という物理的な物と作者という人格をWebで有機的につなぐというのも特異なところですね。
MUNOZさんのサイトを発見! このプロジェクトの活動の様子がよく分かります。
http://www.amormunoz.net/index.php?/news/maquila-r4/


技術とは何か。賃金格差について。物と人をつなぐ方法に付いて。
様々なテーマをぶち込んだ面白い活動で、アナログだけどデジタルでよかったです。
刺繍を見ただけでは意味や意義が分かりづらいところが残念。ホントにブザー鳴らすだけで通り過ぎちゃっていた人が割といた感じが。映像を見ていた人もそれなりにはいましたけれど。
技術は人の手から。改めてその思いを強くしました。

追記。刺繍をしてくれた方のページに飛ぶことに成功しました!

会場内では写真撮影はOKのようでした(動画はとらないように言われました)し、作品の趣旨からも問題ないかと思い、2枚あったうちの向かって右側の方の作品について、BiDi Code部分を写真撮影しておりました。

ただ、このままではすんなりと読み込めなかったため、Photoshopをドットエディタとして使用して、先ほどの写真を見ながら1ドットずつ打ち込んでデータ化してみました。

それをネットで見つけた下記のBidi Cordデコーダーに通してみると。
http://zxing.org/w/decode.jspx
下記のURLが得られました。
http://maquilaregion4.info/index.php?/trabajadores/13/
良かったら見てみてください。たまたま日本に出展された作品の刺繍を、この方が縫ってくれたんだって思うと、地球が小さく見えてきました。
メキシコ人の写真をこんなにじっくり眺めるなんて、面白いなあ……。今朝はこんなことになるなんて思いもしなかったです。